ウォン・カーウァイ監督の最新作、『マイ・ブルーベリー・ナイツ』を観てきました。
主演はこれが初演技という世界の歌姫、ノラ・ジョーンズ。共演も超豪華。ジュード・ロウ、ナタリー・ポートマン、デイヴィッド・ストラザーン、そしてレイチェル・ワイズ…と、普段は看板はってる主役級の役者たちが脇を固めています。
千絵の勝手な採点表〜! ★★★☆☆(星3つ)
恋人の突然の心変わりでボロボロに傷付いてしまった女の子(ノラ・ジョーンズ)が、立ち直って次の恋に踏み出すために、新たな自分探しの旅に出る…というStory。ひとつの恋を忘れ、次の恋に進むためには、どれほどの“距離”が必要なのか…?というのをテーマにしたこの作品、舞台は彼女の旅とともにNYからメンフィス、そしてラスベガスへと移っていきます。
何といってもこのテーマに強く惹かれた私。女の人も色々なタイプがいて、「失恋したからって、過去を引きずっていつまでも落ち込んでいるなんて、時間がもったいないじゃない!」と言わんばかりに、♪〜別れたら〜次の人〜♪に切り替えられるたくましい女性も最近では多くいるみたいだけど、グジグジと終わった恋を引きずって、ドロドロの自分と向き合い、次の恋をすることに怖がりになってしまう女性も沢山います。はい、私は後者です。っていうか後者でした。37歳の時にした初めての大失恋では、2年間も泣きまくって、お酒を飲みまくって、心閉ざしてたもんなぁ〜。「もう恋はこりごり!」と思ってたから、どんなに素敵な男の人と出逢っても、言い寄られても(ってホンマかいっ)、全く誰も目に入らんかったわい。今から考えるとオンナとして一番脂の乗った時期に、ホントもったいないことをしたもんだ…。でも仕方ないんだよね。簡単に忘れられるような恋なら最初からしないもん! 私から言わせてもらえば、そんなライトな恋愛をする方が時間がもったいないんじゃい!
そんな一途な(っていうかしつこい?)私だったから、この主人公の女の子が立ち直ろうとしてもなかなか立ち直れず、もがく姿がズキズキと胸に痛かった。旅に出ようって気持ち…分かるなぁ〜。
この主人公の女の子は自分を探しに出た旅で色んな人に出会います。みんな何かしら問題を抱えていて、どこか傷ついていて、必死でもがいて再生しようとしてる…。そんな人たちと望まずも関わりを持って過ごすうち、次第に彼女の傷は癒されていく。
人ってやっぱり自分を映す鏡なんだなぁ〜と観ていて思いました。彼女には時間も必要だったし、距離も必要だったし、鏡も必要だったんですねぇ。彼女の心の中の雨が止んで、少しずつ晴れていく様子が、わざとらしくなく、本当に徐々に徐々に…という感じで、すごく丁寧に描かれていたのがすごく良かった。監督もノラも上手いよなぁ〜と思いました。ノラは初演技とは思えないほど自然な演技で驚きです。「役者が唄を歌うのは難しいけど、歌手はなんなく演技をやってのけるんだよな」という言葉を昔、ある演出家さんから聞いたけどホントですね。そもそも唄は3分間の演技ですもんね。それはそうと、ノラ・ジョーンズは加藤ローサにそっくりだと気付いたんだけど、そう思うのは私だけでしょうか?
この映画でものすごく光ってたのが、ナタリー・ポートマン。これまでのただの綺麗なお人形さんのナタリーじゃない。すごくカッコ良くって存在感がありました。ナタリーは先日観た『ダージリン急行』にもチラっと脇役で出演していて驚いたけど、この映画の役といい、演技に目覚めたのか、あえて大作ではないアーティスティックな作品を選んでる気がします。
ジュード・ロウもやっぱり素敵だった! 最初はお互いまったく気のない二人が、少しずつ意識する存在になり、ついに恋に変わる瞬間が、二人とも鼻の穴にティッシュを詰めた超マヌケな顔だったのが可笑しかったです。
映像はウォン・カーウァイらしく、所々スローモーションになったり、ボヤけたりして、説明的なセリフではなく、雰囲気でStoryを伝えてくる映画でした。色合いも独特で、スクリーンからNYやメンフィスやべガスの街の空気の匂いがぷんぷん匂ってくる感じ…。まるでミュージック・クリップを観ているような仕上がりで、好きな人と嫌いな人にハッキリ分かれる映画だと思います。
最近のハリウッド映画にしては煙草を吸うシーンが多かったのは意外。さすがアジアの監督! 冒頭の主人公の失恋があっさりと描かれてたのが残念。もっと深〜くグッサリと見せてくれてたら、もっと感情移入できたのにな…。星3つはそんなワケです。
最後のキスシーンは、これまでの映画のキスシーンの中でもベスト5に入るくらい素敵なキス! う〜ん、してみたい…。映画館というより、ビデオで夜中一人、お酒を片手にじっくり観るのにオススメの映画です。