恵比寿ガーデンシネマで『再会の街で』を観てきました。ちょいと地味だけど、じわじわ心温まる素晴らしい作品でした。★★★★☆(4つ星)
ほんわかコメディーがお得意のアダム・サンドラーがシリアスな役柄に挑戦。アダムファンにはそれだけでも観る価値あり。
キャリアと幸せな家庭に恵まれながらも、どこか人生のむなしさを感じる歯科医(ドン・チードル)と、911の悲劇で家族を失い、殻に閉じこもって現実の世界に生きることから逃げ出してしまった元歯科医(アダム・サンドラー)の友情と再生を描く感動作。
前もってあらすじを読んだ時、正直言って「えっ〜! アダム・サンドラーにこんな暗い役は合わないんでは…?」と思ったんだけど、いやいや、素晴らしい演技力でグイグイ引き込まれ、後半からは泣かされっぱなしでした。あの、悲しみを瞳の奥深くにたたえた表情…今も胸に焼き付いて忘れられません。もう1人の主演、ドン・チードルの優しくて落ち着いた演技も良かった! 「こんなの小手先(演技力)だけでは表現できないよナ」
「二人とも、俳優としてという以前に、人間として懐の深い、優しい人なんだろうナ」と確信しました。
愛する家族を突然にいっぺんに失うという悲しみは、想像を越えるものだと思います。「もし自分の身に起こったら…」と、どんなに思いやって想像してみても、とても足らない。実際に同じ経験をした人以外は、誰も本当に心の痛みを理解することは出来ないのです。でも、ドン・チードルが演じたアランが、そんな心に深い傷を負ってしまった友人を“なんとか立ち直らせてあげたい”と切に思う気持ちにはとても共感できました。無力さに悩み、落ち込む姿にも…。
みなさんは心に傷を負った時、泣きまくって話しまくって、ひと時、ドン底に陥るタイプですか? それとも心にフタをして忘れようとするタイプですか? 私は前者です。自虐的なのかもしれないけど、とことん傷を直視し、当分は泣きまくり、聞いてくれる人に話しまくり(人迷惑なんだけど…)、あえて自分で傷を開いて膿を出し切ります。傷がかさぶたになって剥がれる頃には「今回はちょいと痛かったナ」てな具合に客観視してたりします。やっかいなのは後者のタイプ。傷にフタをして見ないようにするから、一見、平気に見えても、実はいつまでも心の中で膿が出続けていて、悲しみが浄化されないままでいる。アダム扮するチャーリはまさにそうでした。少しでも傷に触れようとする人間を排除するから、友人はおろか、精神科医もお手上げ。ボロボロになった心をしまい込み、現実逃避していた姿がとても痛々しかったです。
この映画のテーマでもあるけど、“話すことで癒される傷”ってあるんですよね。これからも大なり小なりたくさんの傷を負うだろう人生…。でも、傷にメスを入れることを怖がらず、傷を恥ずかしがらず、友だちや大事な人に話してその都度、前向きに立ち直っていこうと思った私でした。友だちがそうなった時も、ただただ何時間でも、「うんうん」と聞いてあげられる余裕のある自分でありたいなと思いました。ワインで酔ってくどくどの文章になってしまった…。勘弁! 1人でじっくり観るのにいい映画です!おわり。