『ロッキー・ザ・ファイナル』観てきました! あんなに化粧が取れるほど泣かされるとは…予想もしてなかったよ〜。こういうストレートな映画大好きだなぁ〜。胸にズンズンきました!
「エイドリア〜ン!!」の叫びで世界を泣かせた『ロッキー』第一作目から30年。シルベスタ・スタローンが60才の身体をはって脚本、監督、主演を務めたロッキー第6弾! スタローンが自身の分身とも言えるロッキー・バルボアへの熱い想いを締めくくるべく作り上げたシリーズ完結編だ!
な〜んて知ったかぶりしてる私ですが、ロッキーは1作目しか観てませんでした。実は私、人がボコボコに殴られて顔が腫れ上がったり、血が飛んだりするのを観るのが怖いのでボクシング観戦は苦手。だから『ロッキー』を最初に観た時も、最後の対戦シーンは手で目を覆いながら指の隙間からチラチラのぞき見した感じでした。それでもやっぱり最後は涙、涙…。ゴロつきの男が愛と友情を得てリングに立ち、打ちのめされながらも立ち向かう人間ドラマの部分にものすごく胸を打たれました。
余談ですが、ロッキーのパチスロ(スロット)が出た時はすぐに打ちましたよ。BIGを引いてあのロッキーのテーマソングが流れてきた時には、胸の奥からラストシーンの感動が込み上げてきて、しゃくり上げるほど泣いてしまいました。周りの客から観たら「あの女、何でスロット打ちながら泣いてるんや? BIG引けたのが相当嬉しかったんかな?」と思われたかなぁ?(それも多少あったかとは思いますが…)。
そんなボクシングが得意でない私なので、シリーズ続編は特に観てなかったワケなのですが、熱烈ロッキーファンの人からは「そんな奴が『ロッキー・ザ・ファイナル』を語るな!」と言われちゃいそうですね。でも何と言われようと語らせてもらいまっす! だってメチャクチャ良かったんだもの! 私のようにシリーズ2、3、4、5をすっとばしても十分に楽しめる内容になってたし、何よりロッキーファンじゃない人にも観て欲しい素晴らしい映画だったから!
現役から退いて小さなレストランを経営をして細々と生計を立ているロッキー・バルボア。かつての輝きは失い、過去の栄光と、他界した愛妻(エイドリアン)の面影をひきずって生きている。そんな老いたロッキーがある事をきっかけに、心の喪失感を埋めるためかのように再び身体を鍛え直し、醜態をさらす覚悟で無謀にもリングに立ち向かう…といった話。
ちょっと待って、これ誰かの話に似てない? そう、曙さんだ! 曙さんの試合を目にするたび、「もうこれ以上、恥をかかないで! 見てられないっ。もっと賢い生き方があるでしょう?」と胸が痛かった私だったけど、この映画を観ていたら、曙さんがああまでして戦うことにこだわった気持ちが少し分かったような気がした。そして、恥をかくことを承知しながらも応援する家族を本当にえらい!と思った。私の夫がもし格闘家だったら…私はロッキーの妻のエイドリアンや、今回登場する新しい恋人のように、愛する人の無謀にも思える決心を受け止め、応援してリングに送り出せるだろうか…? と考えさせられた。到底できないだろうなぁ。「やめとき! 怪我して再起不能なったら私も子供もどうすりゃええの?」とか言ってしまうやろな。「おもいっきり高い保険入ってからにしてや!」とか…。あぁ、自己嫌悪。
それにしても感心したのは、60才という年齢でロッキーを再びスクリーンによみがえらせたスタローンのパワー。ファイトシーンでは映画といえどもかなりパンチを食らうし、何よりも勇気がいったのは、60才のたるんだ身体をさらしてカメラの前に立つことだっただろうと思う。でも、そこはさすがスターさんで、普通の60才のおじさんから考えると大した筋肉持続力だったけど、かつての“イタリアの種馬”の異名をとったロッキーの荒々しい面影は微塵もない。当たり前ちゃ〜当たり前なんだけど、つい昔と比べてしまい『あらら…』と痛々しく眺めてしまう観客たち。時は残酷だなぁ〜。
でも、でもなのだ! このファイナルはカッコいいロッキーじゃなく、ぶざまな老体(言い過ぎかぁ?)で戦うからこそビンビンに伝わってくるものがあったと思う。そんなロッキーが今のスタローン自身と重なるからこそこの映画は胸を打つんだと思う。実際、彼はインタビューで「どんなに馬鹿にされようがもう一度ロッキーに挑戦したかった!」と言っています。過去の名誉に安住せず、自分自身と戦うかのようにスタローンが挑戦した今回の映画を、「くさ過ぎ」とか「ひとりよがりで観てられない」とかいう人もいるようだけど、私はすごくカッコいい!と思いました。私もこの先どんなに歳をとって見栄えが衰えても、心は歳をとらないよう努力しようと思ったし、そういう心の火を燃やし続ける熱い人には素直に拍手を送れる人間でいたいナと思いました。
そういえば、1作目のロッキー・バルボア(負け犬だった三流ボクサーが最後に本当の勝利を勝ち取る物語)もまさに当時のスタローンとオーバーラップしてたんですよね。売れない俳優でオーディションを落ちまくり、ポルノ俳優や用心棒をしてなんとか食べていたスタローンが、ある日、モハメット・アリと無名のボクサーとの壮絶な試合を観戦し、感動した彼はそれをヒントに3日間、不眠不休で『ロッキー』の脚本を書き上げて制作会社に売り込んだ。ストーリーが気に入られ、ナント7万5千ドルという破格の買い取り額になったにもかかわらず、彼は売り渡さなかった。制作側の条件がロッキー役をロバート・レッドフォードやアル・パチーノといった有名スターにやらせるというものだったから。彼は喉から手が出るほど欲しかった大金を蹴って、あくまでも自分がロッキー役をやることにこだわった。『この役は俺にしか出来ないんだ!』と。
モメにモメた交渉の結果、ロッキー役は手に入れたものの、一時期36万ドルまでつり上がった脚本料は2万ドルに減額、主演料は俳優組合の定める最低料金に、制作費はTVシリーズ1本分しか与えられず、監督も安いギャラで働いてくれるB級監督に決まった。そんな低予算映画が予想外に大ヒットし、アカデミー作品賞まで獲ってしまったんだから、まさにアメリカンドリーム! この話はどれだけの売れない俳優に夢を与えたでしょう。(私もそのうちの一人でした)
『ロッキーシリーズ』は今回で終わってしまうけど、スタローンにはこれからも『これぞ映画の王道!』というようなクサいクサい根性モノを作っていってほしいナ。そして冷めがちな私たちの心を鼓舞してくれるカッコいいおじさんでいてほしいと思います。